任意後見制度を利用する場合の手続の流れ

この記事では、任意後見制度を実際に利用する場合の手続について、その流れを見ていきます。任意後見制度の概要やメリット・デメリットについては以前の記事をご覧ください。

1.まず自分が認知症になったりしたときなどに、支援してくれる人(任意後見受任者といいます)を選びます
 任意後見受任者は信頼できる家族や親族、あるいは専門家(行政書士や弁護士等)から選ぶのが一般的です。

2.次に、任意後見受任者に将来支援してもらう内容を決めます
 内容については、主に生活や介護等についてのものになります。生活費をはじめとするお金に関すること、不動産等の財産がある場合にはその利用や処分に関する事柄について、どこまでやってもらうか(代理権)の範囲を決めます。また同時に任意後見人(任意後見が始まる前の任意後見受任者のこと)への報酬や経費の支払いについても決めておきます。

3.任意後見契約の内容が固まったらそれを公正証書として作成し、任意後見契約を締結します。
 任意後見契約は公正証書で作成しなければならないことが法律で定められているため、必ず公正証書にしなければなりません。公正証書にする段階で、実際には何度か公証人と具体的な文面についての打ち合わせや修正等がありますが、専門家(行政書士や弁護士等)に作成を依頼すれば、依頼人が公証役場に出向くのは実際に公正証書を作成する時の1回ですみます。なお公正証書を作成する際に公証役場に払う手数料の目安は15,000円程度です(契約内容による増減あり)。

ここまでで、任意後見契約の締結は完了します。
その後についてですが、委任者が認知症などにならずに天寿を全うした場合などについては特に何もありません。任意後見契約は結んだものの、委任者の死亡により契約の効力は失われます。
一方、残念ながら委任者が認知症などで支援を必要とする状況になってしまった場合には、以下のような手続を経て任意後見契約がその効力を生じます。

4.任意後見契約の効力を生じさせるためには、まず家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てを行います。
 この申立てを行えるのは、本人(委任者)、本人の配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者です。また申立てには以下の書類が必要です(標準的な例)。
・申立書
・本人の戸籍謄本
・任意後見契約公正証書の写し
・本人の成年後見等に関する登記事項証明書
・本人の診断書、情報シート
・本人の財産に関する資料

5.申立てを受けた家庭裁判所が審理の上、職権で任意後見監督人を選出します。

6.任意後見監督人が選任されると、任意後見人が契約に沿って活動を始めます。それに伴い、財産目録を作成したり、役所をはじめとする各関係機関への届出を行ったりする必要もあります。

以上が、任意後見制度を実際に利用する場合の手続の流れになります。

また残念ながら何らかの理由により任意後見人がその務めを果たせなくなった場合には、自ら辞任することも可能です。ただし、この場合には務めを果たせなくなった正当な事由が必要(病気で長期療法を要するなど)です。
他には、任意後見人が適正に任務を遂行しなかったり不正行為を行ったりすることも考えられます。その場合には、任意後見人の解任を家庭裁判所に請求することが出来ます。この時、解任を請求できるのは本人、任意後見監督人、親族そして検察官です。
任意後見人が自ら辞任を申し出た場合も解任請求がなされたときも、家庭裁判所がその事由を審査し、辞任・解任の可否を判断することになります。